2008年9月1日に実施した、東北大学医学系GCOE「Network Medicine創生拠点」キックオフシンポジウムの内容と、参加した大学院生による感想です。
上記日程にて、当GCOEのキックオフシンポジウムを行いました。当日はシンガポール大学腫瘍医学研究所所長 伊藤嘉明教授および財団法人癌研究会癌研究所所長 野田哲生博士による特別講演をはじめ、GCOE事業実施担当者らによる口頭発表、ならびに拠点参加大学院生のポスター発表が多数実施されました。
講演者名 | 講演題目 | |
---|---|---|
山本雅之 | 医学系研究科長 | 開会の挨拶 |
菅村和夫 | 21世紀COE「シグナル伝達病」拠点リーダー | 21世紀COE「シグナル伝達病」の総括 |
岡 芳知 | GCOE「Network Medicine」拠点リーダー | Network Medicine拠点について |
井上明久 | 東北大学総長 | 祝辞 |
岡 芳知 | 医学系研究科教授 | |
伊藤嘉明 | シンガポール大学腫瘍 医学研究所所長 |
Tumor suppressor RUNX3:A novel gatekeeper of colon carcinogenesis |
野田哲生 | 癌研究会癌研究所所長 | がんとNetwork medicine |
山本雅之 | 医学系研究科教授 | 酸化ストレス応答と発がん防御の分子ネットワークの解明 |
岡 芳知 | 医学系研究科教授 | Metabolic Information Highway:自律神経系による臓器間代謝情報ネットワークの発見 |
貫和敏博 | 医学系研究科教授 | 呼吸器疾患におけるsignal medicineとnetwork medicine |
五十嵐和彦 | 医学系研究科教授 | 転写因子の複合体と回路:Genomic Network Medicineへの展開 |
中山啓子 | 医学系研究科教授 | ヒストンシャペロン NAP1L1をユビキチン化する新規リガーゼのDNA障害応答における機能について |
水野健作 | 生命科学研究科教授 | 細胞骨格、細胞運動のシグナルネットワークと疾患 |
高井俊行 | 加齢医学研究所教授 | 制御性受容体の免疫学とNetwork Medicine |
菅村和夫 | 医学系研究科教授 | ヒト疾患研究における超免疫不全NOGマウスの活用 |
伊藤嘉明 | シンガポール大学腫瘍医学研究所所長 | 閉会の挨拶 |
大学院生によるポスター発表(38件)
今回、Network Medicineという大きなテーマの中スタートを切った今回のGCOEシンポジウムに参加し、大学院生として研究を始めた私にとってとてもパワフルで刺激的なシンポジウムになったと思います。そして、この環境で研究を始められること、教育を受けられることをとてもうれしく感じているところです。IFリーダーの研究についてのセッションでは、世界をリードする先生方のご講演を聴き、生体のシステム、また疾患をさまざまな角度からアプローチし研究されており、これまで内科医として研修を行い専門分野の疾患に加え、同時に起こる合併症などさまざまな疾患、病態に直面することも多かったため、そのメカニズムを理解するうえでとても興味深いものとなりました。また、若手研究者や大学院生のポスター発表では、これまで同世代の研究者たちが普段どのような内容の研究をしているのか接する機会が少なかったためとても新鮮に感じられました。私は転写因子による生体の制御機構を中心に研究を始めたばかりですが、そのことが生体、臓器、細胞間のネットワークの制御機構を紐解き、ひいては今後の医療、特に血液疾患の病態解明、治療につながるよう努力していきたいと思います。
私は現在、糖尿病、脂質異常症などの疾患を実際の臨床の場で勉強する一方、大学院生として指導を受けながら研究しています。今回のキックオフシンポジウムには研究交流会のポスター発表という形で参加させていただきました。
大学院は4年目を迎えましたが、自分が主に関わっている分野でさえ理解不足ところが多く、ましてや他分野の領域の話などという感じが正直なところでした。そこで、まず初めに自分の専門分野に近い発表を見にいきました。他の教室の糖代謝に関する研究発表に対する質問、自分なりの意見を聞いてもらったことは非常に有意義であったと思います。次に他分野の発表を見て回っていると、発表者のかたに、「説明しましょうか」と声をかけてもらい、懇切丁寧に一から内容説明していただきました。すごく初歩的な質問にも答えていただき、非常に勉強になりました。
今回の経験を通じて思ったことは、仮に異なった分野でも、そこで学んだことを自分の頭の中に蓄積することは、知識の裾野を広げ、今後の自分を伸ばす上で重要でないだろうかということです。今後は、他分野であっても目をむけるように努め、また、自分の研究も積極的に伝えることにより様々な視点から意見を頂く、といった経験をどんどん増やしていきたいと思いました。
最後になりましたが、グローバルCOE拠点リーダーの岡先生を初め、御担当先生方にはこのような機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。
GCOEキックオフシンポジウムでは、多岐に渡る応用分野での研究内容に触れることが出来、私にとって大きな刺激になりました。これまでに私が参加してきたどの学会とも異なり、普段私達が行なっている研究が将来的にどういった形で応用され、発展して行くのか、ということを直接先生方の発表を通して知ることが出来たのは、論文等で目にするのとは異なり、とても新鮮で貴重な経験でした。また、私自身もポスターセッションにおいて研究発表をさせて戴きましたが、他分野の研究をしておられる先生とのディスカッションや、臨床研究を主体にされておられる先生から意見を聞かせて戴いたりと、大変充実した時間でした。今回のシンポジウムを通して、Network Medicineという概念が、これからの研究発展において、また、私達学生やこれから生命科学を志すであろう人達にとって、こうしたプログラムの存在は非常に心強いものであり、自らの研究が生命科学—医学という繋がりの中でどこに位置しており、どういった意味合いを持つものなのかということを再認識できる重要な機会を与えてくれるものであると感じました。
東北大学Global COE Network Medicine 創生拠点キックオフシンポジウムにおいて、個体全体をネットワークシステムと捉え包括的に理解するという壮大なテーマに触れ、講演者の先生方の先駆的な研究についてお聞きすることができ刺激的な時間を過ごすことができました。
今回のシンポジウムから、全体を包括的に理解するために重要なのはNetwork構造の理解なのではないかと感じました。生物の中に存在する複雑なNetwork構造を研究し、その構造のなかに存在する性質を明らかにすることで、細分化し解析するだけでは見えてこなかった全体像の理解につながるのではないかと思います。そのためには、まさに既存の枠組みを超えた科学に挑戦することが必要であり、東北大学GCOE Network Medicine 創生拠点が世界に先駆けたネットワーク研究・教育の中核を担っていくのだろうと感じました。
自らも生物における複雑Network理解を目指し、日々研究に精進していきたいと思います。
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