2009年9月9日〜10日に実施した、東北大学医学系GCOE「Network Medicine創生拠点」CSI-GCOE Joint Workshopの講演内容と、大学院生3名による感想です。
上記日程にて、シンガポール大学と当プログラムのJoint Workshopを開催しました。今回は東北大では行われて いない最新の研究方法を実際に見学させていただき、新しい技術とその有用性について活発な議論を展開しました。
講演者名 | 講演題目 | |
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五十嵐和彦 | 医学系研究科教授 | A dense network of nuclear enzymes for transcription regression |
中山 啓子 | 医学系研究科教授 | Cell cycle control during differentiation :regulation by two F-box protein, Fbw7 |
叶 直樹 | 薬学研究科准教授 | Photo-cross-linked small-molecule microarray and affinity matrix for facilitating chemical genetics |
大槻 純男 | 薬学研究科准教授 | Protein-network analysis for drug resistant mechanism in cancer cells using targeted absolute proteomics |
井川 俊太郎 | 学際科学国際高等センター准教授 | Exploring the function of multi-faceted (tumor suppression, differentiation, stem cell maintenance, etc.) p63 gene by multi-faceted approach |
本橋 ほづみ | RIセンター准教授 | Regulation of Megakaryopoiesis by CNC-Maf Heterodimeric Transcription Factors |
佐竹 正延 | 加齢医学研究所教授 | Evolution of membrane trafficking-regulating ArfGAPs genes from yeast to human |
大橋 一正 | 生命科学研究科准教授 | Screening of LIM-kinase inhibitors using bimolecular fluorescence complementation probes |
高橋 武司 | 医学系研究科助教 | EpCAM as a useful marker for the tumor initiating cells in hepatocellular carcinoma |
白木 琢磨 | 医学系研究科助教 | PPARg acts as a sensor for endogenous electrophilic ligands - Mechanistic insight and its application to drug discovery |
黒河 博文 | 医学系研究科講師 | Structural Basis of Sensor System for Cytoprotective Gene Expression Responding to Carcinogens and Oxidative Stress |
感想
今回のsymposiumではシンガポールの研究体制の一面しか見ていないので間違ったとらえ方をしているかもしれないが、帰国直後の素直な気持ちを記すことにします。
初めて東北大学以外の研究施設を見学し、国を挙げた研究方針に基づき組織された研究内容、シンガポールの研究施設の規模、研究機器の充実度に非常に衝撃を受けた。天然資源のないシンガポールという小さい島国が国を挙げて知的財産に投資をし、国際的な競争力のあるサイエンスの場を作り上げて成果を残している点は同じ島国である日本にとっても参考になる部分も多いのではないかと感じた。以下に4つの点に関して感想を記します。
総じて、様々な面で自分のモチベーションを高める有意義なsymposiumとなったので、次の機会には自分の研究を進展させて自分の研究内容に関しても討論できるようになりたいと思います。
今回のシンポジウムでは、シンガポール大学をはじめ多くの施設を見学させていただき、そこで実際に研究をしておられる先生方の発表を拝聴することができました。なかでも印象に残ったのは、がんにおける遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、診断や治療に役立てようとする試みでした。がん細胞では多数の遺伝子の発現が変化していますが、発症のメカニズムを解明するためには、そこから単一の責任遺伝子を探し出すのが一般的な研究の進め方だと思います。これに対して今回のシンポジウムでは、がんの性質の指標とするために、全体的な遺伝子発現変化のパターンに着目している先生方もおられ、興味深く感じました。どちらの手法にもそれぞれの長所と短所があると思いますが、両方の視点を知っておくことで今後の自分の研究の参考にできればと思います。また、質疑応答の時間では、私の拙い英語での質問にどの先生も真摯に答えてくださり、大変ありがたく感じるとともに、より学ぶところの多いシンポジウムとなりました。 研究の内容に加え、大規模な網羅的解析のための設備が充実していることにも驚かされました。一つの研究室では購入・維持が大変な機器を研究所全体で利用するという考え方は、私が日頃からお世話になっている共通機器室やNM-GCOEの研究支援プラットフォームにも通じるものがあると思います。こうした研究支援体制は、東北大学の大きな長所ですので、これからも発展していってほしいと感じました。 最後に、貴重な参加の機会を与えてくださったシンガポール大学および東北大学NM-GCOEの先生方、開催に御尽力いただいた支援室スタッフ・秘書の皆様に、心より感謝致します。
2009年9月9・10日の2日間、シンガポール大学で行われた「CSI-GCOE Joint Symposium」に参加させて頂きました。7時間という長いフライト時間に比して、日本との時差わずか1時間のシンガポールは、涼しくもの足りなかった仙台の夏が恋しくなるような暑さでした。
初日はまず、最初のセッションの会場のある「バイオポリス」に驚かされました。バイオポリスとは、それぞれ「Genome」、「Proteos」など、バイオ関連の名称が付けられた7棟の研究開発専用のビルからなるバイオメディカル研究開発拠点のことですが、近代的な美しい建物の外見のみならず、最先端の解析機器など設備・環境の揃った研究環境は本当にすばらしく、感嘆せずにはいられませんでした。今回のシンポジウムにおいて、CSIの先生方からは、このような先端機器を利用した、ハイスループットの解析に関する研究内容を多数お伺いすることができました。
シンポジウムは、2日間を通して23の演題があり、両日とも活発な議論が交わされました。私は、CNCファミリーに属する転写因子NF-E2 p45について、ChIP-Sequence解析を用いた研究に取り組んでいるので、ChIP-Sequence解析を用いて、ES細胞における転写因子の結合サイトを調べるというお仕事をなさっていたHuck-Hui Ng先生の話は大変興味深く拝聴させて頂きました。また、Frederic Andre Jean BARD先生の、全ゲノムRNA干渉によるスクリーニングを用いた解析のお仕事がとても面白かったです。今後全ゲノムRNA干渉スクリーニングが利用しやすくなれば、多くの現象に関わる遺伝子が同定されていくのだろうということを実感しました。他の先生方も大変勉強になる報告をなされておられ、これからの自分の研究の進め方や実験の手法の参考にしたいと思いました。
大変充実したシンポジウムで、2日間がとても早く感じられました。セッションが刺激的で勉強になっただけでなく、懇親会などを通して多くの方と交流することができ、楽しい時間を過ごすことができました。
今回のシンポジウムに参加する機会を与えてくださった伊藤先生、中山先生をはじめ、準備・運営して下さった先生、スタッフの方々に深く感謝申し上げます。